[Prologue]

[Main story]
・First Impression
・Second Finding
・Playing Tag1
・Playing Tag2
・Playing Tag3
・Playing Tag Epilogue
・a little plots 01
・a little plots 02
・a little plots 03
・Merciful Murder 01
・Merciful Murder 02
・Doppelganger
・姫と王 01

[番外編]
・MerryChristmas[BL]
・相対正義論New
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・First Impression Side-b
・ep01 [BL]
・ep01.Side-b [BL]
・分かたれた家系

相対正義論7

高架下

泉谷家から事件の起こった高架下まで、そんなに遠くはない。直線距離にして約2km、渓が通っている桜華学園と方角は反対側になるが距離的には変わらないはずだ。
そんな事件が起こったことも驚きだったが、こんなにも学校の近くで起こった事件でありながら噂にもならなかったことが驚きだ。第一発見者は霧咲刑事の話によると、桜華の生徒だったという。生徒の名前は羽取 侑真。聞き覚えのある名前だなと思い返しながら、ふと思い出す。

確か、クラスメイトが噂していた先輩の名前も羽取ではなかったろうか。
『訪ねてみる必要がありそうだ』
思い出しきったとき、ちょうど現場だったという高架下にたどりつく。学校区と雑居ビルが立ち並ぶ地域のちょうど間にあるようなこの場所は、何をしているのかわからない建物ばかりの場所だ。この国の首都はおかしなもので、人が息苦しくなるほどたくさんいるくせに、急にぽっかりといなくなる場所や時がある。この高架下も、ちょうどそう言う場所なのだ。

日が暮れて、街灯がつき始めている。ちょうど帰宅時間のせいか、ガードレールに隔てられた先の道路をたくさんの車が行きかっている。その割に歩行者は少ない。それだけ中途半端な場所。橋の上を、緑の線の引かれた電車が走ってゆく。急に音が止む。人通りの途切れる空白の時間。
『逢魔が刻…』
昔の人々は昼と夜が入れ替わるこのような時間帯をそう呼んだ。現実とそうでない世界の狭間。

渓が目をつぶり、怨気が残留していないか集中する。
何も、感じない。
懐から紙を取り出し、息を吹きかけて投げる。紙はまるで生命を持ったかのように渓の背後に回る。
渓が紙を目で追い、振り返ると、桜華の制服を着た青年が立っていた。

「何やってんの?」
声をかけてきたのは、昨日覚えたばかりの顔。二宮だったか。紙は二宮にまっしぐらに飛んでいく。
「うわ、何コレ!熱っ!うわっ!」
懐に隠していた護身刀を取り出し、すかさず二宮の首に突き付ける。
刀を突き付け、両者が向かい合う形になる。二宮は臨戦態勢には入らず、ただひたすら驚いてる様子だ。手に持っていた紙袋を思わず落とし、がらんがらんと派手な音が鳴る。

しばらく二宮の様子を見、徐々に渓は警戒を解く。刃を引いて一歩後ろに下がる。
「何やってるんですか、こんなところで。」
「そ、それはこっちの台詞だ!お前何こんなところで刀なんて持って…なんで着物なんだよ!コスプレイヤーか!」
コスプレイヤーという単語を出す時点、大分落ち着きが戻ったのだろう。
「あとをつけて来たんですか?」
「人をストーカーみたく言うな!本当はもっと早く声かけようと思ってたんだよ!」
「じゃあどうして?」
「それは…」
二宮はしどろもどろになり、落とした紙袋をつかむ。
「関係ねーだろ!知らねえよ!」
捨て台詞のように叫びながら、元来た方向、桜花の方向へと走り去っていった。
何しに来たんだろう。紙袋を落とした時の音…何か軽い箱のような。

ああもしかして…お弁当箱を返そうとしたんだろうか。

そう思いながらも、式符が反応したことに疑念を抱く。式符は、鬼の気に反応するようになっている。
祖先に鬼がいたのだろうか。人間でも、たまに鬼を祖先に持つ者がいる。ぼう、と考えながらも、なんとなく戦意をそがれた気分になる。
まあいい。明日学校に行ったら、第一発見者羽取 侑真に話を聞こう。

『Writted by ピコリ』